シェア暮らしで広がるセカンドライフの可能性
前回、辻本先生から、一気に終活をはじめるより慣らし運転をするように、50歳になった頃から少しずつ物を整理するところから始める。10年後の60歳を目指し第二の人生をシミレーションしてみる。というアドバイスをいただきました。しかし、なかなか重い腰を上げるきっかけがないのですが・・・
(辻本)
そういうご意見、多いですよ。考えを整理するひとつのきっかけとして、私は遺言書を書くというのをお勧めしています。私も試しに預けてみたのですが、令和2年7月10日から法務局で遺言書を3,900円で預かってくれる制度が施行されました。
遺言書なんてお金持ちしか必要がないでしょとか、すぐに死ぬわけでもないしとか。なにかと人ごとになりがちですが、人生の終盤の入り口を身近に感じるようになったとき、ひとつのきっけかになるのではないでしょうか。
シニア世代と一括りにできない年代層の厚さ
来年の春に、まだまだ元気な60代以降のシングル女性と女性の外国人介護士とのシェアハウスをオープンします。60歳以降の女性だけのシェアハウスは、これまでなかったとスタイルだと思います。ファイナンシャルプランナーの立場から、こういう住まい方はどう思われますか?
(辻本)
いまの社会ではシニア=介護のイメージで語られることが多いですよね。
しかし、シニアのイメージがそこでしか語られないのは飛躍しすぎだと感じています。まだまだ元気で働くこともできるシニアの存在って、あまり注目はされません。
もちろん人の手を借りないといけない“老い”は必ずやってきます。その心の準備をする場としてのシェアハウスという新たな暮らし方もありなのではないでしょうか。
60代から80代、その先の100歳まで含めると、シニアと一括りにできないほど層が厚いのが現実です。しかし世間でいうシニアとは75歳以降の後期高齢者の方達にスポットを当てた情報が多く、コモンフルールのようなシェアハウスの形態は知られるのに時間がかかるかもしれません。
(辻本)
シングル女性の相談の中で一番多いのは、住まいのこと。賃貸のままで暮らすのか、持ち家の購入かで悩まれる方は多いですね。年齢が高くなるほど賃貸へ入居するのは難しくなりますし、かといってローンを抱えて購入するには勇気がいる。
リタイヤ後、60代、70代の住まい方が賃貸か持ち家購入かの二者選択しかない現状の中で、シングルの女性にとって、シェアハウスで暮らすという新たな選択肢が増えたことに期待しています。
また、家族、友達、仕事関係といったしばりを持たない、様々な背景を持つ人達と一定の距離感で一緒に暮らすことで何が生まれるのか、さらに地域との関わりを大切にしたシェアハウスというのも、これまでなかったスタイルなのですごく興味深いです。
第二の人生のチャレンジの場としてのシェアハウス
例えば、英語の教師をしていた女性が、シェアハウスで英語教室を始めるとか、料理好きの女性が広いキッチンを使って料理教室を開くとか。60年以上生きてきて得た豊かな人生経験を、この場でぜひ生かして欲しいと考えています。定年は人生終盤の入り口ではなく、自分次第でチャレンジできる、第二の人生の入り口ですから。
(辻本)
以前、定年退職後、これまでの勤務時間帯は何をしていますか、というアンケートに「テレビを観ている」と答える人が多いと聞いてとても残念に感じたことがありました。
もっといろいろな活動をすることでより生きがいのある充実した暮らしができるのではないでしょうか。それは仕事をフルタイムでバリバリするということではなく、小さな仕事や地域の仕事だったり。そのライフスタイルを支えてくれるのも、このシェアハウスではないかと思います。
共同生活をするにあたって、家事の分担は必要不可欠です。しかし三人三様、得意不得意を話し合いお互いにカバーできる関係性ができ、このシェアハウスだからできる、自分たちで楽しめる場づくりを楽しんでほしいと願っています。
家族でもなく、友達でもない、新しい距離感を持った人達と暮らし、新たな地域とのコミュニケーションを持つことで、新しい自分を発見でき、人生の第二のステージが豊かになるのではないかと思います。
あくまで一緒に暮らすという距離感の大切さ
(辻本)
私が事務所を置くここはシェアオフィスなんです。ITに強い人が一人いらして、私はよくパソコンの不具合を相談にのってもらいます。
助けてもらうこともあれば、私が助けることもある。助けてもらうことを当たり前にするのではなく、ちょっとした困りごとがあったときに、「どうしたの」と声を掛けてもらえることがとても心の支えになるなぁと感じます。
シェアハウスでも同じではないでしょうか。毎日のおはよう、おかえり、ただいまという何気ない挨拶で、人の温もりを感じることができる。
一緒に暮らしているからといって、頼りすぎない一定の距離感を持つ、だからこそ長くお付き合いできる。「あくまで一緒に暮らす」というシェアハウスでの住まい方が、60歳以降の方々の定番のスタイルになればいいなと思いますね。
―おわりー
辻本由香(つじもとゆか) つじもとFP事務所 代表
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)・相続手続きウンセラー・キャリアカウンセラー(CDA)・証券外務員1種・第2種衛生管理・両立支援コーディネーター・CNJがんナビゲーター
兵庫県神戸市出身、奈良県奈良市在住
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