憧れの日本で介護福祉士として働く

コモンフルールのほど近くにある特別養護老人ホーム（社会福祉法人四恩学園）で、介護福祉士として働くベトナム出身のルオン・ティ・ホン・ガットさん。2020年１月に国家試験に合格し、この４月から正職員の介護福祉士として勤務。ルオンさんは2016年4月に来日。日本語学校に２年通い、その後、介護福祉の専門学校で２年間学んだという頑張り屋さんです。

ーー　来日するきっかけは何ですか？

ルオン　子どもの頃から、よく日本の映画を観ていて日本が大好きでした。ベトナムの短期大学で薬剤師になるための勉強をしていましたが、卒業するときに日本に行くことを決めました。

ーー　ご両親は驚いたでしょう。

ルオン　はい、日本語も話せないのにと、最初は反対されました。それでも１ヶ月ほど話し合って、真面目に勉強するのならと、送り出してくれました。

ーー　日本での生活を始めて、とまどったことはありましたか？

ルオン　最初は生活習慣の違いに、とまどいました。

ーー　例えば、どんなことですか？

ルオン　この施設でアルバイトを始めた頃、肘をついて食事をすると寮母さんに注意をされました。ベトナムでは肘をついて食事をするのが普通です。でもだめな理由を誰も教えてくれません。だから自分でその理由を探しました。

他のことでもお年寄りに違うよと教えてもらうこともあります。日本語がまだ上手く話せないベトナム出身の友達は、とても悩んでいましたので、私が理由を探して教えてあげます。私もまだ知らないことがたくさんあります。

ーー　国によって文化、習慣は違いますからね。真面目な人ほど悩むことが多いのでしょうね。

ルオン　私もいろいろなことがわからないので、いまも悩んでいます。

ーー　介護福祉士の仕事は、来日する前から決めていたのですか？

ルオン　いいえ、日本語学校へ行っているときのアルバイト先で知り合った、お年寄りとの交流が楽しくて、私は介護の仕事にむいているかなと思いました。

ーー　日本語学校と介護福祉の専門学校の２つの授業料を払うのは大変だったのでは？

ルオン　日本語学校のお金は両親に借りました。いま、少しずつ返しています。専門学校のお金は、大阪府社会福祉協議会の介護福祉士等修学資金貸付を利用しました。これは、専門学校を卒業後、1年以内に介護福祉士として大阪府内の社会福祉施設などで継続して５年間働くと返済しなくてもいいのです。

ーー　なるほど、そんな制度があるのですね。でも、介護福祉の専門学校は日本語だけの授業ですよね。

ルオン　はい、そうです。日本語学校では日常会話しか教えてもらえません。専門用語がたくさん使われている日本語の教科書を理解するまで時間がかかります。ここの施設でアルバイトをしながらの勉強でしたので、寝る時間を削るしかありませんでした。

ーー　本当に頑張り屋さんですよね。教科書もそうですが、国家試験も日本人を対象に作られた問題ですよね。それで１回で合格するなんて！ルオンさんの努力がどれほど凄かったのかわかりますし、人と接する仕事が好きなんだということも伝わってきます。

ルオン　はい、人に役立つことは私にとってはとても大切なことです。例えば、道で人が倒れていると、私はすぐに助けに行きたいです。でも日本では寝ているだけかもしれないから、声を掛けるのは良くないと言われます。ベトナムでは誰もが声を掛けたり、助けたりするので驚きました。

ーー　大きな都市は、見て見ぬ振りの傾向が強いかもしれませんね。ルオンさんの人が好き、見て見ぬ振りができない優しさがよくわかります。

（後編はにつづく）